ガラスの熱割れの原因と対策、保険について

ガラスの熱割れとは

窓ガラスが勝手に割れた!?「熱割れ」とは

窓ガラスは私たちの生活になじみ深く必要不可欠な設備ですが、強い衝撃を与えると簡単に割れることはよく知られていると思います。

ですが、物理的な攻撃を受けていなくても割れることがあるのはご存じでしょうか。

住宅に取り付けられている窓ガラスで、「何もしていないのにガラスにヒビが入っていた」、「知らない間に勝手に窓が割れていた」というトラブルが起きるのは珍しいことではないのです。

今回はガラスの熱割れについて、原因や予防方法のほか、実際に熱割れが起きて修理や交換が必要になった時に使える保険についてなどを詳しく解説いたします。

熱割れが起こる原因・メカニズムは?

サッシ周辺・日陰部分は膨張しない

窓ガラスに熱割れが起きてしまう主な原因は、「熱膨張」と「温度差」です。

ガラスは温度が高くなると膨張する性質を持っています。

強い日射などを受けてガラスが吸熱し高温になる際に、熱を加えられているのがガラス全体であれば、均一に膨張するため熱割れが起きるリスクは高くありません。

ですが、日射が当たっている部分と当たっていない部分があるなどの状況になった場合では、ガラス1枚の面で大きな温度差が生じてしまいます。

加熱されたガラスの一部分だけが膨張してしまうと、膨張していない部分との引っ張り合いとなります。

ガラスの温度差による引っ張り合いは「熱応力」と呼ばれており、熱応力に耐えきれなくなった時にガラスにヒビが入り割れてしまうのです。

熱割れの見分け方について

ガラスの熱割れにはいくつかの特徴があり、物理的な攻撃によるガラスの割れと見分けることができます。

熱割れのヒビの本数

熱割れの見分け方①ヒビの本数を見る

熱割れを起こしたガラスにおいて、もっとも分かりやすい特徴は割れた時に入るヒビの本数です。

物がぶつかるなど強い衝撃を受けて割れたガラスは通常、衝撃を受けた部分を中心として放射状に多数のヒビが入るため、亀裂の形は蜘蛛の巣のような見た目をしています。

対して、熱割れを起こしたガラスの場合は基本的に1本、多くても2~3本ほどのヒビしか入りません。

吸熱したガラスの高温部と低温部の温度差で起こる引っ張り合いである「熱応力」が大きいほど、熱割れで発生するヒビの本数は多くなるのです。

熱割れのヒビは直角に始まる

熱割れの見分け方②亀裂の発生場所を見る

ヒビ割れの発生場所を見ることによって、熱割れかそうでないかを見分けることもできます。

上記で触れたように、物理的な攻撃によってガラスが割れた場合は衝撃を受けた部分を中心にヒビが入りますが、熱割れによってガラスが割れた場合はサッシの内部に埋め込まれているガラスのエッジ部分から割れが発生します。

亀裂はエッジに対して直角に入ったあとガラスの中心に向かって蛇行しながら割れが広がるため、見た目での判断が簡単にできると思います。

エッジ部分から亀裂が入る原因は、大きく分けて2つあります。

1つ目の理由は、エッジ部分はガラスの中でももっとも温度差が生じやすいということです。

ガラスの一部だけに日射が当たったとき、日射熱を吸収して高温になる部分と、サッシ枠に囲まれて温度が上がらず低温のままであるエッジ部分とでは、大きな温度差が生じます。

そのため窓ガラスのエッジ部分は熱応力が発生しやすい場所であり、熱割れを起こしたときはエッジ部分から亀裂が発生するのです。

2つ目の理由は、ガラスの切断面の状態が悪い場合です。

窓ガラスの切断面に小さな傷や欠けがあると、そこが熱割れによるヒビ割れの起点となりやすいのです。

ガラスをカットする時やサッシに埋め込む時など製造時の技術不足が主な原因ですが、大手メーカーはもちろん一般のガラス屋でも通常は「クリーンカット」と呼ばれる手法を用いてガラスのエッジをまっすぐに切断することができます。

加えて、切断したガラスのエッジに対してサビ止めの塗布や研磨剤による処理を施しますので、基本的には心配する必要はないでしょう。

弊社でもこれらの技術を用いてガラスの修理交換を行っていますが、実績が少なく料金が異様に安いガラス交換業者などの場合は技術面に問題があったりアフターフォローサービスが不十分でなかったりするケースも少なからずありますので、ご注意ください。

熱割れを起こしやすいガラスの種類は?

ガラスの熱割れは通常のフロートガラスでも起こりますが、フロートガラスと比較して熱割れが起きやすいガラスもございます。

窓に使われるガラスにはいくつかの種類があり、基本の型であるフロートガラスを加工することによって様々な効果を持つ機能性ガラスが製造されています。

機能性ガラスの種類によっては、通常のフロートガラスよりも熱を吸収しやすい構造となるため、熱割れが起きるリスクが高いものがあるのです。

以下で、熱割れのリスクが高いガラスをご紹介します。

ワイヤーが入っているガラスは熱割れしやすい

網入りガラス

機能性ガラスの熱割れで特に注意が必要なのは、「網入りガラス」です。

網入りガラスはワイヤー入りガラスや防火設備用ガラスとも呼ばれ、火災が起きた際に炎の燃え広がりを防止する目的で使用される機能性ガラスのことを指します。

フロートガラスの中に金属製のワイヤーが封入された構造をしており、火事でガラスが割れた時に破片がワイヤーに引っかかることで脱落を防ぎ、火事を広範囲に広がりにくくする効果があります。

建築基準法によって防火地域や準防火地域などでは開口部の防火設備の設置が義務付けられているのですが、網入りガラスは網無し透明タイプの防火ガラスや耐熱ガラスより安価ということもあって、建物が密集している市街地の中心や集合住宅で設置されていることが非常に多いです。

網入りガラスの中に封入されたワイヤーは日射の吸収率が高く、熱の影響を受けやすいという特徴があります。

ワイヤーはガラスよりも熱膨張率が大きいため、膨張するとガラスに負担がかかり熱割れを起こすのです。

また、網入りガラスのエッジはサッシ内部でワイヤーがむき出しの状態になっています。

ワイヤーガードと呼ばれるサビ止め剤などで適切に処理されていても、長期間の使用による経年劣化でワイヤーにサビが発生してしまうと、熱割れの原因となることがあるのです。詳しくは、「網入りガラスの熱割れについて」をご覧ください。

サイズが大きい、厚みがあるガラス

大型で面積が大きいガラスは、日射が当たる部分と当たらない部分ができやすいため、ガラス内での温度差が発生しやすくなっています。

16~19mmほどの厚みがあるガラスは強度が高いというメリットがありますが、日射を吸熱しやすく高温になりやすい性質をもっています。

どちらも熱応力が大きくなりやすいため、通常のフロートガラスよりも熱割れのリスクが高いのです。

Low-Eコーティングの窓が内側と外側の両方に取り付けられている

Low-E金属膜が塗布されたガラスは遮熱効果・断熱効果が高く、冷暖房効率が上がり省エネやエコに貢献できる人気のガラスです。

内窓と外窓の両方のガラスにLow-E金属膜がコーティングされている場合、熱がこもりやすく熱割れが起きる可能性が高くなります。

そのため、通常はどちらか片方にのみ設置します。

窓ガラスに起こる「熱割れ」の予防・対策方法とは

熱割れの対策方法

窓ガラスに熱割れを起こさせないためには、ガラスの熱膨張を防止することと、ガラス内で温度差を起きにくくさせることが重要となります。

普段の生活では、何が原因となってガラスに熱膨張や温度差が起こってしまうのでしょうか。

以下で、詳しくご説明いたします。

窓ガラスの近くに物を置かない

窓から十分に距離をとって物を置く

窓ガラスの近くに物が置かれていると、日射が反射して熱がこもり、ガラスの放熱も妨げられてしまうため熱割れが起きやすくります。

よくある熱割れの原因では、タンスやソファーが窓に密着するように配置されている、段ボールを窓の近くに置きっぱなしにしているなどが挙げられます。

できるだけ窓の周辺には物を置かない、置く場合は十分に距離をとることで熱割れを防ぐことができます。

遮光カーテンやブラインドが窓ガラスに密着しすぎている場合も同様です。

もし太陽光が強く当たる昼間にカーテンを閉め切るのであれば、窓とカーテンの間に10cm以上の空間をもたせると熱割れリスクを軽減することができます。

稀ですが、布団を窓ガラスの近くで干していた、サッシに厚手のコートをかけていた等が原因で熱割れが起きたというお客様もおられましたのでこちらも注意が必要です。

また、窓にポスターやステッカーなどを直接貼られていると、ガラスの一部分だけが高熱となり熱応力が発生し、熱割れを起こす場合もあるため避けることをおすすめします。

窓に暖房の熱が直接当たらないようにする

暖房器具から排出された暖かい風が直接ガラスに当ると、熱風が当たっていない部分と温度差が生じるため、熱割れによってヒビが入ることがあります。

エアコンやファンヒーター、ストーブの暖房器具から発せられている風がガラスに当たらないように注意しましょう。

室外機の風がガラスに当たらないようにする

エアコンの室外機から出ている温風も、ガラスに当たると熱割れを起こす可能性があります。

室外機を窓に向けて設置することは通常あり得ませんが、ベランダが狭く十分な排気空間が確保できない環境では、室外機の設置方向が外向きでも温風が反射してガラスに当たるケースもあるのです。

対処方法としては、温風の排出方向を斜め上などに変更することができる風向調節用の制御アダプターを室外機に取り付けることが効果的です。

風向調節用アダプターは風向ガイドや室外機用ルーバーなどと呼ばれており、メーカー品がネット通販サイトで購入できるほか、ホームセンターなどで代用品が売られていることもあります。

また、隣家との距離が近い場合、お互い室外機の風向を注意することで熱割れトラブルの防止になるでしょう。

窓ガラスに日光が当たりすぎる場合は、日陰を作る

ガラスに直接あたる太陽光を遮ることで、熱割れを予防することができます。

具体的には、グリーンカーテン、サンシェード、すだれなどの使用です。

サンシェードやすだれは種類が豊富で、S字フックで簡単に取り付けができる製品も販売されています。

素材や見た目も様々ですので、好みや住宅の外観に合わせて選択できるのも魅力の1つと言えるでしょう。

マンションやアパートなど集合住宅では、サンシェードの使用が禁止されている場合がありますので規約等の確認が必要です。

また、グリーンカーテンを取り付ける場合は、枯れ葉や薬剤の飛散などによる近隣トラブルや害虫の発生などに注意しましょう。

窓ガラスにフィルムを貼る場合は、種類に注意する

ガラス用のフィルムはホームセンターやネット通販サイトでも販売されており、紫外線カット効果や目隠し、防犯や防災、遮熱や断熱などの効果を安価かつ手軽に得られることから人気があります。

しかし、窓ガラスとフィルムの相性が悪い場合は、ガラスフィルムに日射熱が滞留し熱割れを起こす可能性があるのです。

特に網入りガラス複層ガラス(ペアガラス)は、ガラスフィルムを貼ることで起きる熱割れのリスクが高いです。

市販されているガラスフィルムには貼り付けることができるガラスの種類が記載されていますので、導入される際はよくお確かめのうえ購入しましょう。

DIYとしてご自身でフィルムを貼る場合は気泡やズレなどにも注意が必要となりますので、施工やフィルム選びで不安を感じられている場合は一般のガラス屋に依頼されることをおすすめいたします。

ガラスのパッキンが劣化していたら取り換える

ガラスを埋め込むサッシには固定用のゴムパッキン(グレージングチャンネル)が部品として使われています。

このパッキンが経年劣化などで傷んでくると、サッシの内部に結露などの水分が入り込みます。

網入りガラスはエッジ部分のワイヤーがむき出し状態になっており、防サビ加工を施されていますが長期的に水分が触れた状態が続くとサビや腐食が発生し、錆割れの原因となります。

錆割れによって傷が入ったガラスが太陽から吸熱すると、熱割れに繋がる恐れがあるのです。

そのため、窓ガラスのパッキンに水滴がついていたらこまめに拭き取ることと、ゴムパッキンが浮いていたり損傷したりしているなら、早めに取り換えることで熱割れを予防することができます。

ガラスが熱割れを起こしたら、修理費用は誰が払うの?

熱割れしたガラスの修理費と保険について

熱割れによって割れたガラスは早急な修理交換が必要となりますが、賃貸と持ち家では費用の支払いが異なります。

また、条件によっては保険が適用され修理費用が支払われる場合もございます。

以下でそれぞれのケースごとに詳しくご説明します。

熱割れの修理費用について①賃貸物件の場合

賃貸物件の窓ガラスで熱割れが起きた場合は、オーナー・管理会社など貸主側が修繕費用を負担します。

賃貸住宅における設備の修繕費は、「借主(入居者)の故意や過失によるもの」でなければ、基本的に貸主に支払い責任が生じるからです。

例えば、ガラスが割れた原因が自然破損や経年劣化によるものや泥棒や空き巣による破壊行為によるものなどであれば、修繕費は貸主負担となります。

熱割れも破損原因が自然によるものとされるので、賃貸のマンションやアパートなどの窓ガラスが熱割れを起こしていたら、管理会社やオーナーに連絡しましょう。

修繕費用を請求されるケースもある

上記でご説明したように、窓ガラスの熱割れは自然に発生するものなので貸主が修理交換にかかる費用のすべてを負担することとなり、基本的には借主負担とはなりません。

しかし、状況によっては修理費用が発生するケースがあるため、注意が必要です。

例えば、熱割れが起きているのを知っているのに借主や管理会社に連絡せず、ガラスの破損個所が広がってしまった場合などがこれに該当します。

また、わざとガラスに熱割れを発生させたと見なされた場合も、修理費用を請求される可能性があります。

トラブルにならないように、窓ガラスに熱割れが起きていたら早急に貸主に連絡をとることはもちろん、窓ガラスに熱膨張が起きにくいように周辺環境を整えておくことも大切であると言えるでしょう。

熱割れの修理費用について②一戸建て・持ち家の場合

一軒家や分譲マンションなど、持ち家の窓ガラスに熱割れが起こった場合は、火災保険から保険金が支払われる可能性があります。

火災保険はその名前から「火事に遭った時だけに使える保険」と思われることもあるのですが、実は自然災害や予想できない突発的な事故なども補償の対象となっているのです。

ご加入されているプランや契約内容、適用の条件などによって違いはありますが、窓ガラスの熱割れは自然破損に該当していることが多いため、火災保険に加入されているのであれば補償範囲内であるか一度確認してみましょう。

火災保険の支払い方式

火災保険を熱割れで使用する際は、免責金額に注意しよう

免責金額とは、保険金の支払いが発生したときに契約者が自己負担する金額のことを指します。

自己負担の支払いには「免責方式(エクセス方式)」と、「フランチャイズ方式」の2種類があります。

免責方式(エクセス方式)では、台風や事故などで家の設備が故障して修理が必要になったとき、「修理費用から免責金額を引いた金額」が保険金として支払われます。

例えば、契約者が免責金額を3万円に設定していたときに修理費用が8万円かかった場合、8万円から3万円を引いた5万円が支払われるのです。

もし免責金額が3万円で、修理費用が3万円に達していなければ保険金は支払われません。

フランチャイズ方式の場合は、修理費用(損害額)が免責設定金額を上回ったら修理費用がすべて支払われます。

どちらも修理費用が免責金額を超えていなければ保険金は支払われないため、窓ガラスが熱割れで破損した時に火災保険の利用をお考えであれば、修理にかかる費用が加入している火災保険の免責金額を超えていないかを確かめてから、ガラス屋に修理を依頼されることをおすすめします。

窓ガラスの熱割れについてのまとめ

今回は、ガラスの熱割れについてのご紹介しました。

熱割れはガラスの熱膨張が主な原因で、ガラス内で温度が高い部分と低い部分の差ができることで発生する自然のヒビ割れ現象です。

熱膨張は日射熱が強すぎる場合だけでなく、家の中の家具の位置や暖房の熱風の方向などによっても起きることがあります。

網入りガラスは特に熱割れを起こしやすいガラスですので、注意が必要と言えるでしょう。

対策方法はガラスに熱膨張を起こさせないようにすることで、タンスや段ボールなどの物を窓の近くに置かない、サンシェードやすだれ等で窓ガラスに適度な日陰を作る、サッシのゴムパッキンが傷んでいたら交換する、などの方法が効果的です。

もし、ご自宅の窓ガラスが熱割れによってヒビが入ってしまった場合、賃貸なら貸主が修理費を負担することとなり、持ち家では火災保険によって保険金がおりる場合がございます。

弊社では熱割れで割れたガラスを年中無休・最短即日での修理交換が可能となっております。

ガラスの専門店ですので、熱割れを起こした網入りガラスや複層ガラス(ペアガラス)を同等品へ交換することや、熱膨張しにくい耐熱強化ガラスへのお取替えにも対応可能です。

お困りの際はお気軽にご相談くださいませ。

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