複数ガラス(ペアガラス)の効果や交換方法、Low-Eガラスとの違いなど
複層ガラス(ペアガラス)とは
複層ガラスは、その名の通り複数のガラスを1セットとして扱う窓ガラスのことです。
最大の特徴は優れた断熱性で、従来の1枚ガラスと比較して2倍もの断熱性能があります。
住宅のエネルギー効率を改善することで、冷暖房にかかる光熱費の削減効果や、CO2の排出量低減などの省エネ効果を得ることができるため、2000年ごろから需要が高まり普及が進んできました。
板硝子協会が行った調査では、2021年の新築住宅において複層ガラスの普及率は一戸建てで97.6%、集合住宅で67.2%という結果が報告されています。
複層ガラスの基本的な構造
複層ガラスの基本構造は、2枚のフロートガラスを組み合わせて、1つの窓として扱います。
ガラスとガラスの間には中間層と呼ばれる約6mmの空間が設けられており、2枚のガラスの厚さと中間層含めた全体の厚さは約12mmにもなります (一般的な1枚ガラスの窓は約3mm)。
中間層には乾燥空気やアルゴンガスなどが封入されているか、真空状態となっています。
複層ガラスと似た名前・構造のガラスとの違い
複層ガラスはペアガラスやエコガラスなど似た名称が多いため、違いが分からない・どれを選べばよいかわからない、と混乱される方も多いのではないでしょうか。
ここでは、ペアガラス・エコガラス・内窓について、複層ガラスとの違いやそれぞれの役割りなどについて、詳しく紹介いたします。
複層ガラスとペアガラスの違いとは
「ペアガラス」というのは、複層ガラスの商品名です。
ガラスメーカーのAGC(旧旭硝子)が製造している複層ガラスの商標登録がペアガラスであり、正しい意味としては「複層ガラス=ペアガラス」ではありません。
AGC以外のメーカーでも複層ガラスは製造販売されており、大手を例に挙げると日本板硝子は「ペアマルチ」、セントラル硝子では「ペアレックス」という商品名となります。
簡単にまとめると、「複層ガラス」は総称であり、「ペアガラス・ペアマルチ・ペアレックス」は各メーカーが製造している複層ガラスの商品名にあたるというわけです。
ただ、耳なじみの良さと語呂の良さから、ペアガラスという名称は複層ガラスを指す言葉として一般的に広まっている傾向にあります。
お客様から複層ガラスのことをペアガラスとオーダーを受けることもありますし、会話の中で伝わりやすいようにガラス屋が複層ガラスのことをペアガラスと呼ぶことも少なくありません。
そのため、複層ガラスとペアガラスは同義として考えて問題ないでしょう。
複層ガラスとエコガラスの違いとは
「エコガラス」は複層ガラスの一種で、Low-E金属膜がコーティングされた複層ガラスのことを指しています。
国内最大手のガラス製造メーカーであるAGC(旧旭硝子)、日本板硝子、セントラル硝子の3社が製造・販売を行っているLow-E複層ガラスの共通呼称として、エコガラスという名称が使われているのです。
エコガラスはLow-E金属膜がコーティングされていない通常タイプの複層ガラスと比較して、遮熱性や断熱性が更に高いという特徴があります。
また、通常の複層ガラスでは得られなかった紫外線カット効果もございます。
複層ガラスと内窓(二重窓)の違いとは
内窓(二重窓)はもともと設置されている窓の内側に、サッシ枠ごと窓をもう1つ取り付けることです。
複層ガラスとの違いは、複層ガラスは窓のガラスを2枚1セットで扱うのに対し、内窓(二重窓)は窓自体が2つになるという点です。
換気などで窓を開ける際の動作がポイントで、窓に複層ガラスが設置されている場合は、通常は鍵の開け閉めと窓の開閉をそれぞれ1回ずつ行いますが、内窓(二重窓)の場合は内側と外側の窓で2回ずつ行う必要があります。
ちなみに、内窓(二重窓)に使用する窓の種類の中には、複層ガラスも含まれています。
通常の窓ガラスの内側に、「複層ガラスの内窓(二重窓)を取り付ける」ことが可能です。
複層ガラス(ペアガラス)が持つ効果・メリットについて
高断熱化住宅には欠かせない複層ガラスは、一般的な1枚ガラスの窓と比較して得られるメリットが多数あります。
ここでは、複層ガラスが持つ効果について詳しく解説します。
断熱性・遮熱性が高い
窓は室内外の熱移動が最も起こりやすい設備ですので、室内の温度を快適な状態で保つには、窓に断熱性や遮熱性を持たせることが重要です。
複層ガラスの中空層は空気の対流を抑え る効果があり、熱の移動を防止します。
室外の空気の温度が冷暖房で調節した室内の空気の温度に干渉しにくくなるため、室温を快適に保つことができます。
室温を快適に保つ効果がありますので、冷暖房の効率アップによる光熱費のカット効果や、CO2の排出量の削減効果などが期待できます。
結露の防止効果がある
結露は空気の温度差が原因で発生します。
暖かい空気は水蒸気を多く含んでいて、窓ガラスから伝わった冷気によって冷やされると水蒸気が凝縮して結露となるのです。
1枚フロートガラスの窓は熱伝導率が高いため結露が起きやすいですが、複層ガラスの場合は中間層があることで室内の空気が温度変化を起こしにくくなっており、結露の発生を防ぐことができます。
結露が起きてしまうと、見た目の悪さや掃除の手間が増えるといった問題だけでなく、カビやダニの発生原因にもなります。
壁や窓枠の腐食防止、ぜんそくやアレルギー対策にも複層ガラスはおすすめなのです。
紫外線のカット効果がある
紫外線には種類があり、人体に特に悪影響を及ぼすのはUV-A。
通常のフロートガラスはシミやたるみの原因となる有害なUV-Aを室内に通してしまいます。
複層ガラスには紫外線カット効果を持った製品があり、特殊フィルムが挟み込まれた合わせガラスを使った複層ガラスや、Low-E金属膜がコーティングされたエコガラスならUV-Aの透過を大幅に防ぐことができるのです。
補助金制度が利用できる場合がある
住宅の高断熱化は国や自治体が推奨しており、高断熱素材を使った窓についても補助金・助成金制度の対象となります。
新築はもちろん、既存住宅においても1枚ガラスの窓から複層ガラスへのリフォームで利用できる補助金制度は設けられています。
制度によって申請期間や予算などは変わりますが、条件に該当している場合は補助金の利用がおすすめです。
複層ガラス(ペアガラス)に交換する際の注意点・デメリット
メリットが多く普及率も高い複層ガラスですが、当然いいことばかりではありません。
設置や交換の前に、求めている効果がきちんと得られるかどうかはもちろん、デメリットについても知っておきましょう。
通常のガラスよりも設置や交換にかかる費用が高い
複層ガラスは2枚または3枚のガラスが1つになった形状のため、1枚ガラスの窓に比べて値段が高いです。
中空層の幅や封入されているガスの種類、部材となるガラスの種類、Low-E金属膜コーティングの有無などによっても値段は大きく変わります。
また、通常の1枚ガラス用サッシでは厚みのある複層ガラスは取り付けることができないため、サッシや障子の交換工事またはアタッチメントの設置なども必要です。
1枚ガラスの窓よりも重たい
複層ガラスは構造上、2枚や3枚のガラスをまとめて動かすため1枚ガラスの窓よりも重量があります。
ガラスの枚数分だけ重さが増えるため、2枚の複層ガラスなら1枚ガラスの窓の倍の重さとなるのです。
一般的な複層ガラスは、防音効果が低い
家の設備の中で音がもっとも出入りしやすいのは窓と言われており、生活音の音漏れを防いだり外部の騒音をシャットアウトしたりするなら窓の防音は必須と言えるでしょう。
複層ガラス(ペアガラス)はガラスが2重になっていることから防音効果が高いと思われがちですが、実は通常の複層ガラスには防音に対する効果はほとんどありません。
基本構造の複層ガラスは「低音域共鳴透過現象」を起こしてしまうため、高音域や中音域においての防音・遮音効果はありますが、低音域に関しては効果が望めないのです。
低音域共鳴透過現象とは
音は空気が振動することで伝わる性質を持っています。
ノーマルタイプの複層ガラス(ペアガラス)は一般的に中間層に空気が封入されているのですが、特定の周波数を持った音が複層ガラスに伝わると、中間層の空気が伸縮してバネのような働きをしてしまい、2枚のガラスが共鳴現象を起こします。
複層ガラスに共鳴現象が起こると音の振動が増幅してしまい、透過する音が元より大きくなった状態で伝わってしまうのです。
共鳴現象は高音域や中音域では起きにくく、低音域で起きやすくなっています。
楽器の太鼓と同じ原理であることから、「太鼓現象」と呼ばれることもあります。
防音性が高い複層ガラス(ペアガラス)について
各メーカーは低音域共鳴透過現象を防止できる複層ガラスを製造販売しています。
一般の複層ガラスよりも中間層の幅が大きく設けられている、厚さが異なるガラスが使われている、中間層が真空状態となっているなど、種類は様々です。
防音複層ガラスのおすすめ商品については、下記でまとめて紹介しております。
複層ガラス(ペアガラス)の交換方法について
複層ガラスは通常のフロートガラスよりも厚みがあるため、1枚ガラス用のサッシだとそのまま取り付けることはできません。
既存の住宅で1枚ガラス用のサッシに複層ガラスを導入する場合は、以下でご紹介する3つの方法のどれかを選択して設置します。
サッシを複層ガラス用に取り換える
既存のサッシを取り外し、複層ガラス用に付け替える方法です。
見た目や機能面ではサッシごと交換が良いのですが、既存のサッシを取り除いて新しいものに付け替えるため、大掛かりなリフォームですので工事に時間がかかり費用も大きくなる方法となります。
条件はありますが、補助金・助成金制度の利用もおすすめです。
アルミサッシは断熱性が低く、結露も起こしやすい
家の高断熱化や結露防止などを目的として高機能な複層ガラスに交換しても、サッシがアルミ素材であれば期待していた効果を得ることができない可能性が高いです。
アルミサッシは低価格で加工しやすく丈夫というメリットから高度経済成長期から爆発的に普及してきましたが、熱伝導率が非常に高いため熱が出入りしやすく結露も起きやすい、気密性が低いなどのデメリットがあります。
そのため、複層ガラスを導入するのであれば、断熱性や気密性に優れた樹脂サッシ、または樹脂とアルミの複合サッシへとの併用がおすすめです。
障子部分の交換を行う
障子を単板ガラス用から複層ガラス用に取り換えることで、窓枠を交換することなく複層ガラスを導入することができます。
「障子」と呼ばれる窓の稼働部分、ガラスのフレームにあたる部品を複層ガラス仕様に取り換える方法で、サッシの枠部分は残します。
そのためサッシごと交換するよりも工事工程が少なく時間や費用を抑えることができます。
もともとサッシの幅が狭すぎるなど、状況によってはサッシごと交換が必要となるケースもございます。
アタッチメントを使用する
既存のアルミサッシに複層ガラス(ペアガラス)をセットする方法です。
アタッチメントと呼ばれる専用フレームをアルミサッシに取り付けることで、サッシの交換工事を行わずに複層ガラスを導入することができます。
工事に時間がかからない、費用が安価で収まるというメリットがありますが、アタッチメントを使う場合は複層ガラスの幅によって網戸が使えなくなる場合があるため注意が必要です。
また、アルミサッシとアタッチメント部分に結露防止効果はない、アルミサッシの熱伝導率は樹脂サッシの1,000分の1のためサッシ部分から冷気が室内に入り込むことは防げないなどのデメリットもあります。
複層ガラスの種類と、おすすめ商品をご紹介
複層ガラスは通常のガラスが2枚1セットになっている商品をベースに、部材のガラスに加工処理を施したり封入するガスの種類を変えたりすることで、性能が高くより機能的となった製品が多数展開されています。
ここでは各種類の複層ガラスの解説とともに、おすすめ商品もご紹介します。
防犯・防災タイプの複層ガラス
耐貫通性のある合わせガラスを部材に使用している複層ガラスは、防犯と防災の両方に効果があります。
合わせガラスは2枚のガラスの間に特殊な樹脂膜を挟み込んで圧着したもので、強い衝撃を受けてガラスが割れた時に破片が樹脂膜に粘着して脱落しにくくなっています。
通常の窓ガラスは破壊が簡単なため空き巣が侵入経路に選ぶことが多いのですが、合わせガラスは突破に時間がかかるため犯罪者は忌避する傾向にあります。
また、破片が散らばりにくいため地震や台風などの災害時に破片によるケガを負うリスクも低減できるのです。
おすすめ商品は、AGC(旧旭硝子)からはサンバランスシェルター、セントラル硝子はラミレックスBGペア、日本板硝子はセキュオペアです。
エコガラス(Low-E複層ガラス)
エコガラスは、複層ガラスの中間層に面しているガラスにLow-E金属膜がコーティングされたもののことです。
Low-EはLow Emissivityの略で、意味は「低放射」。
熱の伝わり方は「放射・伝導・対流」の3種類あり、エコガラスは放射による熱の移動を抑制する働きを持っています。
低放射性能を持つ酸化錫や銀などをベースに保護金属を重ねてガラス面にコーティングすることで、複層ガラスに放射による熱の伝導を抑制する働きを持たせることができるのです。
Low-E複層ガラス(エコガラス)には、遮熱タイプと断熱タイプがある
エコガラスは、複層ガラスの中空層に面しているガラスの室内側か室外側のどちらかにのみ、Low-E金属膜のコーティングを施します。
遮熱タイプのエコガラスは、Low-E金属膜が室外側のガラスにコーティングされています。
別名は日射遮蔽型エコガラスで、夏の暑さ対策が必要なお部屋の窓に設置されることが多い種類です。
日射の反射率が高く、太陽の熱や太陽光の照り返しを室内に侵入させにくくする効果があります。
日当たりが良すぎる、西日が強すぎるなど、室内の温度が上がりやすくクーラーが効きにくいお部屋の窓には、遮熱タイプのエコガラスがおすすめです。
断熱タイプのエコガラスは、Low-E金属膜のコーティングが室内側となります。
別名は日射取得型エコガラスで、日射熱を適度に取り込み、暖房器具などで暖められた空気を外に逃がさない性質を持っています。
日当たりが悪く室温が下がりやすいなど寒さ対策が必要なお部屋の窓での使用に向いており、特に北海道や東北地方など寒冷地においては断熱タイプのエコガラスが広く普及しています。
エコガラスのおすすめ商品
AGC(旧旭硝子)のおすすめはサンバランスシリーズで、日射遮蔽型はサンバランスアクアグリーン、日射取得型はサンバランスピュアクリアまたはサンバランスシルバーとなります。
セントラル硝子はペアレックスシリーズがおすすめで、ペアレックスツインガードが遮熱タイプ、ペアレックスヒートガードが断熱タイプです。
日本板硝子からはペアマルチシリーズで、ペアマルチEAが寒冷地仕様の断熱タイプに該当しています。
なお、エコガラスにはグレードがあります。
通常タイプのエコガラスは、熱還流率が1.5W(平方メートル・K)以下かつJIS断熱性能区分がT4以下の商品が対象です。
一方、上位グレードは「エコガラスS」と呼ばれ、熱還流率が1.5W(平方メートル・K)以上、JIS断熱性能区分はT5またはT6となっており、ガラスを3枚使用したトリプルガラスや、中空層の幅が16mmある高性能タイプのエコガラスが対象商品となっています。
一般社団法人「板硝子協会」のホームページによると、エコガラスSは通常のエコガラスと比較して1.5倍の断熱性能が発揮できるとされています。
ご自宅の高断熱化を高めて冷暖房費用を抑えたい、省エネを意識した生活を送りたい場合には、エコガラスSに該当する複層ガラスの導入をご検討されてみてはいかがでしょうか。
防音タイプの複層ガラス
通常の複層ガラスは低音域共鳴透過現象を起こしますが、防音複層ガラスなら高い防音性能を発揮できます。
種類は複数あって、異なる厚さのガラスを組み合わせることによって共振を抑える異厚複層ガラス、防音効果を持つ特殊フィルムを挟み込んだ合わせガラスが部材に用いられている防音合わせガラスの複層ガラス、音の振動を吸収するレゾネーターが搭載されている高機能タイプの防音複層ガラスなどがございます。
おすすめ商品は、AGC(旧旭硝子)のマイミュート、セントラル硝子のペアレックスソネス・ネオ、日本板硝子のクリアFit静とスペーシアクール静です。
なお、複層ガラス(ペアガラス)に高レベルな防音性能が搭載されていても、サッシが一般的なアルミタイプだった場合はほとんど防音効果を得ることができません。
窓と窓枠(サッシ)に隙間があった場合は、隙間を通して音の振動が伝わってしまうからです。
防音フィルムやレゾネーターが搭載された防音複層ガラスを取り入れる際は、防音製の高い樹脂サッシと組み合わせて使用することで、より高レベルな防音効果を発揮することができます。
複層ガラスの効果やメリット・デメリットなど、複層ガラスについてご紹介しました。
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