型板ガラスについて

型板ガラスとは

型板ガラスとは

型板ガラスとは、「かたいたガラス」と読み、馴染みのない言葉かもしれませんが、室内の窓ガラスや玄関、浴室のドアなど身近なところによく使われている硝子です。

また、このガラスは型ガラスとも呼ばれており、名前の通り表面に模様のある「型(かた)」を押し当てる事で、パターンを付けて作られています。

型板ガラスは、熱で柔らかく溶けたガラスの生地を、回転する2本の水冷ロールの間に流し入れて成型する「ロールアウト製法」と呼ばれる方法によって、連続的に作られたガラスです。

2本のロールのうち上側は模様が付いていない平面なロール、その下側は模様の彫刻が施された型ロールとなっており、この2本の間に溶融したガラスを通す事で、ガラスの片面にのみ型ロールに彫刻されたデザインや型模様が転写されます。

反対の面は平らでツルツルしていますが、型ロールの彫刻によって凹凸の型模様の付いた表面はデコボコしている為、不透明になっています。

その為、型板ガラスは主に視界を遮る目的で使われる事が多い硝子であり、同じように目隠し効果のあるすりガラスフロストガラスよりも、目隠しガラスとしての長所が多く、あらゆる場所で利用されています。表面に様々な模様を施す事が出来る為、デザイン性に富んでおり、デザインガラスとも呼ばれます。室内の間仕切りや応接間の装飾など幅広く利用されています。

一般的なフロートガラス(透明なガラス)は、殆どのガラス板の素板となっており、厚さのバリエーションが豊富です。

すりガラスやフロストガラスはフロートガラスとして出来上がったものを二次的に再加工して作り出すものですので、フロートガラスと同じだけの厚みの種類にガラスをオーダーする事が出来ます。

それに比べて型板ガラスは、フロートガラスの製造方法である「フロート法」とは違う独自の方法で一から製造されている為、厚さのバリエーションは少ないです。

日本国内で製造されている主な型板ガラスの厚みの種類は、2mm(薄型)、4mm・6mm(厚型)の3種類があり、梨地模様が薄型の2mm、かすみ模様が厚型の4mm・6mm、チェッカー等のデザイン系4mm等、厚みによって模様が異なります。

一般的に使われている厚さとしては、室内で使用される開き戸や引き戸の扉が2mm~4mm、サッシ窓など屋外で使用される部分には厚めの4mm~6mm、棚板やテーブルトップのように上に物を置いたり、日常的によく触れるような物には5mm以上が利用されています。

このように大きさや設置する場所・環境など用途に合わせて、安全な厚みのガラスを選ぶと良いでしょう。

なお、型板ガラスはDIYや日曜大工で使用するガラスとしてもとても扱い易いガラスで、カット等の加工が容易です。

硝子の販売店によっては、ご希望のサイズに合わせてカットされた型板ガラスをオーダーで販売しているところもありますが、ガラスカッターという専用の工具があれば素人でも簡単にカットする事が出来ます。

ただし、カットする際は模様のついた凸凹デコボコ面から行うと、刃先が動いてしまい上手くカットする事が出来ませんので、ツルツル

また、型板ガラスは曲線加工をした曲げガラスにする事も可能です。

曲線加工とは曲線にカットする事ではなく、ガラス自体の表面を湾曲させるもので、湾曲した形状に作られた金型(金属製の型)の上に乗せた板ガラスを、電気・ガスを使用して徐々に熱加工を加え軟化させる事で、その自重により金型の形状に沿った曲線を作り出す事が出来ます。

曲げガラスは、椅子やテーブル等のインテリア家具・雑貨、建造物のガラス壁や螺旋階段の壁面など様々な場所で利用されていますが、いずれの場合においても格調高く、現代的でオシャレな空間を演出する事が出来ます。

水槽でもよく利用されている曲げガラスですが、型板ガラスで作られた曲げガラスでは目隠し効果を発揮してしまう為、用途にはご注意ください。

型板ガラスのメリット

目隠しの効果がある

型板ガラスのガラス表面は、通常のフロートガラスのように平ではなく型模様による凹凸があり、その凹凸によって光の屈折が起き不透明になっている為、ガラス越しの視界がぼやけて見えるという特徴があります。

適度に視線を遮る目隠しの効果を持っている為、道路など人通りの多い外部に面した場所、玄関や一階の窓、トイレや浴室等、プライバシーを守りたい場所の窓ガラスや装飾によく利用されています。

なお、模様の種類によって凹凸の形状も異なる為、見えにくさは様々です。

水に濡れても透けない

同じ目隠し用のガラスである従来のすりガラスでは、凹凸面に水分が付着してしまうとガラスが透けてしまい、内側が見えるようになってしまうデメリットがありました。

しかし、型板ガラスは水に濡れても透けない特徴を持っており、お風呂場などの水周りでも問題ご利用頂けます。

すりガラスも、室内側から濡れてしまう心配のない場所で利用するのであれば、凹凸面を室内側に向けて設置する事で、雨等により外側から濡れて透ける事が無い為、目隠し効果を得る事が出来るますが、冬の寒い季節になり室内側に結露が発生するようになると、結露の水滴によってガラスが透けてしまいます。

利用する場所や用途によりますが、やはり目隠し用のガラスとしては型板ガラスがオススメです。

採光性があり柔らかい日差しを得られる

視界を遮る為、日光の透過率が低いと思われがちな型板ガラスですが、光を遮る訳ではないので明るさは同じ厚みのフロートガラス(透明ガラス)と殆ど変わりません。

型板ガラスにした事で室内が暗くなる心配はなく、光を十分に通しながら視線を適度に遮る事が出来る為、様々な場所で利用されています。

また、表面に刻まれた型模様のデコボコによって光が柔らかく拡散される為、普通の透明ガラスよりも柔らかい明るさの光を室内へ均一に採り入れる事が出来ます。これにより部屋全体を柔らかな印象にする事が出来ます。

掃除がしやすい

型板ガラスは、目隠し効果のあるガラスの中で最も汚れが落ちやすいガラスです。

型板ガラス以外に、視線を遮る事が出来る目隠し効果のある「すりガラス」や「フロストガラス」はありますが、そのどちらもガラス表面に微細な傷を付ける事で不透明にしている為、傷による細かなデコボコに埃や指紋等の汚れが付着しやすく大変掃除がしにくくなっています。

型板ガラスの表面にもデコボコはありますが、傷加工ほど細かいデコボコではない為、すりガラス・フロストガラスと比べると汚れが残りにくく、簡単な拭き掃除で汚れを除去する事が出来ます。

水垢が発生しやすいバスルーム等の水まわりや、日常的に接触し手垢が付着しやすいテーブル天板や家具類のガラス等、汚れが付着しやすい場所に目隠しガラスを利用する時は、型板ガラスをオススメします。

また、型板ガラスには型板模様の入っているデコボコのある面とツルツルで平坦な面があり、当然デコボコのある表面側に汚れが付着しやすくなっている為、ガラスを取り付ける際、デコボコしている面を汚れが付着しにくい室内側に向けて設置する事をオススメします。。

室内に使用する際も掃除の事を考えた向きで設置したり、メンテナンスの難しい部分に利用する事を避ける等の工夫をする事が大切です。

デザインが豊富

型板ガラスは、表面に様々な模様を施す事が出来る為、デザインガラスとも呼ばれています。

昭和の時代に広く親しまれていたガラスであり、生産面などの理由から殆どが廃盤となっていましたが、近年では古民家カフェなど、レトロなインテリアの需要の高まりから、復刻版として生産されるようになっています。

型板ガラスのデメリット

割れやすく防犯に不向き

型板ガラスは普通のフロートガラス(透明ガラス)と変わらない耐衝性を持っていますが、耐風圧等の強度面ではフロートガラスよりも劣ります。

その為、強風や雨粒を受けやすい場所に設置する場合は注意が必要です。

また、型板ガラスの耐熱温度はフロートガラスと同じ110℃となっており、通常の使用では特に問題なくお使いいただけますが、火災などの強い熱への耐性はありません。

強化ガラスに加工できる

型板ガラスは熱処理による加工を行う事で、強化ガラスとして使用する事が出来ます。

強化ガラスにする事で、耐風圧強度は同じ厚みの型板ガラスの5倍にまで上げり割れにくくはなりますが、アイスピックやドライバーを使用する等の一点への攻撃には弱く、簡単に割れてしまうので防犯性能はありません。

その為、人通りの少ない路地に面した家の窓等、空き巣に狙われやすい場所での利用はあまりオススメ出来ません。

型板ガラスを窓に設置する場合は、防犯シャッターや防犯アラーム等を併せて取り付ける事で防犯性を高める対策も視野に入れてお考えください。

防犯性能はありませんが、割れると破片が粉々の粒状になって落下する為、怪我のリスクは低下させる事が出来ますし、耐熱温度も約200℃まで上がりますので、強化ガラスに加工する事で視線を適度に遮りつつ安全性も得る事が可能です。

空間が狭く感じる

型板ガラスのように不透明に色が付いた硝子は、目隠しの効果を得られる一方で閉塞感や圧迫感を感じてしまうというデメリットも伴います。

窓の外側まで視界が抜けている透明ガラスと比べると、型板ガラスでは開放感を損なってしまう為、利用する場所の環境をよく考慮して、多少開放感を損なっても外部からの視線はシャットアウトし、プライバシーを優先させたい場所に利用される事をオススメします。

型板ガラスの模様について

型板ガラスには多くの模様があり、厚みによって模様が異なります。

型板ガラスのデザインの主な種類は、「霞(かすみ)」と「梨地(なしじ)」の2種類です。

厚みが2mmの薄いガラスは「梨地ガラス」、厚みが4mm・6mmの厚いガラスには「霞ガラス」が用いられ、その他のデザインガラスは主に4mmのガラスが使われています。

なお、型板ガラスのデザインは、基本的に型板ガラスが登場した昭和の中頃から大きく変化していません。

型板ガラスは古くから様々な場所で利用されており、懐かしいと感じる方も多く居られます。

すりガラスやフロストガラス等と同様に目隠しが出来るガラスの中では一番「古い」というイメージを持たれがちであり、室内の雰囲気やインテリアによってはデザインの相性が合わずに、浮いてしまう場合もあるので注意が必要です。

しかし近年では、レトロなデザインの人気が高まり、型板ガラスはオシャレだという理由から大変人気のあるガラスとなっています。

また、洋風の家屋にも利用出来るような模様も生産されるようになっている為、現代のモダンなインテリアにも気軽に取り入れる事が出来ます。

梨地ガラス

梨地(なしじ)模様のガラスは、霞(かすみ)ガラスと比べるとデコボコの量が多くきめが細かくなっており、名前の通り果物の梨のようにザラザラとした手触りをしています。

その分、不透明度が高く視界を遮る目隠し効果も高いのが特徴です。

ガラスの厚みは2mmのみとなっており、それ以外のサイズを選ぶ事は出来ません。

ガラス自体がとても薄いので、窓ガラス等の開口部や広い範囲で利用するには危険を伴う為、家具や間仕切り等の外部に面していない室内用のガラスとして利用するのが一般的です。

梨地ガラスは、昭和の時代から一般住居の室内用ガラス障子などでよく利用されていた為、懐かしく思われる方も多く居られます。

当時は、梨地模様を下地として別の模様をポイントに置いた色々な種類のデザインガラスが製造されており、中でも、星の模様が散りばめられた「銀河ガラス」「夜空ガラス」は流通量も多かった為、近年ではレトロ人気に伴い再び重要が高まっています。

なお、下地が梨地ガラスであってもデザインガラスの場合の厚みは4mmとなっています。

霞ガラス

最もよく目にする型板ガラスは、この霞(かすみ)模様のガラスです。

ガラス表面のデコボコが少なく粗めである為、梨地ガラスと比較すると目隠し効果は薄く、その分部屋全体の閉塞感は多少抑える事が出来ます。

ガラスの厚みは4mmと6mmの2種類があり、梨地模様の型板ガラスよりも厚くなります。

一般的によく利用されているのは4mm厚の型板ガラスですが、大型の窓ガラスのように1メートルを超えるような広範囲で利用する場合は6mm厚の型板ガラスを採用しておくと安心です。

窓ガラスや室内の間仕切り(パーテーション)、住宅のサッシや浴室などの建物の開口部に建具として利用されたり、棚のガラス戸などの身近な部分にも多く用いられています。

また、梨地に比べるとデザイン性が高く、価格も安いという特徴があり人気があります。

アンティークガラス

アンティークガラスは、ステンドグラスで有名なフランスから輸入されてきた硝子です。ガラスメーカーとして世界的にも長い歴史を誇るSaint-Gobain(サンゴバン株式会社)のアンティーク調のデザインガラスです。

レトロチックな雰囲気が人気で、昔ながらの昭和・大正時代のガラスを思わせるゆらぎのあるガラスや泡入りガラス等の趣きあるガラスなど種類も豊富です。

高級感のあるアンティーク調の輸入家具や建具とも相性が良く、デザイン建築や輸入住宅、デザイン性の高い飲食店や洋服店など店舗の窓ガラスや内装ガラス・装飾ガラスとして幅広く利用されており、空間をアンティークやレトロな雰囲気に演出してくれます。

また、カラードアンティークと呼ばれている色のついたアンティークガラスも人気があります。通常のアンティークガラス同様、店舗の内装用装飾ガラス、家具のガラスの他に、ステンドグラスの素材としても利用されています。

チェッカーガラス

チェッカーガラスは、アンティークガラスと同じくサンゴバン社から生産されているデザインガラスです。

格子柄にデザインされている事から、「モザイクガラス」「ワッフルガラス」とも呼ばれるガラスです。

格子柄のマス目のサイズは粗いものから細かいものまで様々あります。

すりガラス調で目隠し効果があり、細かなチェック柄がレトロで可愛らしいデザインである為、特に女性からの人気が高く、カントリー調・アンティーク調の室内の建具や家具の扉などの装飾によく利用されています。

昭和型板ガラス

昭和初期に日本で生産されていたガラスの片面に模様が入ったデザインガラスです。

当時は様々な柄が製造されており人気のあったガラスですが、現在では廃盤になってしまいました。

しかし、レトロ人気に伴い再び需要が高まった事で、近年では当時に使われていた型ロールを使った復刻版として海外で生産された物を輸入する事で、手に入れる事が出来るようになりました。

その希少性と、昔ながらのノスタルジックな模様でアンティークやレトロな雰囲気を演出してくれるだけでなく、昔から使用している家具や古民家の修繕にも利用する事が出来ます。

型板ガラスとすりガラスの違い

外からの視線を遮る効果を持つすりガラスと型板ガラス、この2つのガラスの一番の違いは製法にあります。

型板ガラスは模様付きのロールと模様が付いていないロールの間に溶融したガラスを通す事で凹凸のある模様を作り出しています。それに対してすりガラスは、ガラスの表面を細かい砂等で研磨する事で、細かい傷を付けて作られています。

この製法の違いにより、2つのガラスは凹凸の粗さが異なり、これによって細かい傷のあるすりガラスは乳白色、大まかな凹凸が付いた型板ガラスの色味はより透明に近くなっています。

すりガラスはサラサラとした質感で、型板ガラスはみかんの皮の様な凹凸がある為、見た目で区別が出来ます。

どちらの目隠しガラスも、ガラス越しにある物が完璧に見えなくなるという訳ではなく、うっすらと透けて見えており、ぼやけたシルエットや色味が見えます。

ガラスと対象物との距離によってその見え方は変わり、ガラスとの距離が近ければ近い程、対象物のシルエットが見えやすくなるのですが、元々白い色がついているすりガラスは、やはり目隠しの効果が高く、ガラス越しに見えるこのシルエットでは何が映っているのか判別がつきません。

すりガラスと比較すると、型板ガラスはシルエットが分かりやすくなっている為、より高い目隠し効果を重視している場合は、すりガラスがオススメです。

なお、すりガラスは水に濡れると透明度が増し、ガラス越しにある物が丸見えになってしまうという、大きなデメリットを持っている為、浴室などの水気の多い場所での利用には向きません。

型板ガラスは、水に濡れても見え方にほぼ変化がないので、基本的に浴室などの水まわりで目隠し効果があるガラスを利用する際は、型板ガラスが採用されます。

すりガラスも型板ガラスも共に、普通の透明ガラスと同等の透過率を持っており、光を遮る事はありません。

また、日光が当たるとガラス表面の凹凸によって光を柔らかく拡散させ、部屋に落ち着いた優しい雰囲気の光を取り込む効果がありますが、光の拡散するキメの細やかさは、表面の凹凸の細かさと比例して細かくなる為、型板ガラスよりもキメの細かい凹凸を持つすりガラスの方が、より優しい印象の光を均一に採り入れる事が出来ます。

表面の凹凸の細かさは、汚れの付きやすさとメンテナンスのしやすさにも違いを生みます。

指紋等の油分や手垢、水垢等がガラスに付着する汚れは数多くありますが、それらの汚れはガラス表面の凹凸に入り込んでしまう為、凹凸が細かければ細かい程、お掃除が大変になってしまいます。

ご利用になれる場所の環境や期待する効果によって、すりガラスもしくは型板ガラスを選びましょう。

型板ガラスの使用箇所

スは、住宅の窓ガラスや玄関・勝手口の扉、家具や雑貨のガラス装飾など、身近なところに様々な用途で利用されています。

また、マンションの一階や道路沿い等、人通りの多い場所に面しており、外の通りから家の中が見えてしまう様な場所の窓ガラスだけでなく、オフィスのパーテーション(間仕切り)等、主に周りの視線を遮って室内のプライバシーを守る用途で用いられることが多いです。

同じ目隠し効果を持つすりガラスの様に、水に濡れると透明になり、目隠し効果を失ってしまう事が無く、お風呂場や洗面所やトイレ等の水まわりのドアや窓にも安心して利用頂けます。

また、様々な模様の型板ガラスが製造、販売されており、デザイン性が高く、食器棚の扉やテーブルトップ等、インテリアの一部にはめ込んで利用される事や、照明器具のシェードに採用される等、ご家庭のみならずオフィスや店舗をお洒落な雰囲気にする事が出来ます。

型板ガラスは古き良き日本のレトロチックな雰囲気を持っている為、和室などの日本らしい場所に利用されることも多く、古民家などレトロでオシャレな空間の演出にも重宝され、人気があります。

「古い」というイメージから、現代のモダンなインテリアにはデザインの相性が合わずに、浮いてしまう場合もあるので注意が必要ですが、洋風の住宅にも取り入れられる模様も生産されるようになっているので、気軽に採用する事が出来ます。

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