合わせガラスの効果と性能、複層ガラスとの違いなど

合わせガラスとは

合わせガラスとは

合わせガラスは、2枚以上のガラスの間に中間膜やポリカーボネート板を挟んで圧着したガラスです。

単層ガラスに比べて割るのが難しく、割れても破片が周囲に飛び散らない性質を持っています。

安全性が高いことから防犯や防災を目的に使用されており、身近なところでは窓やドアのほか車のフロントガラスなどにも使われています。

また、中間層の種類を変えることで防音効果を持たせたり、色やデザインなどを変えたりすることもできます。

合わせガラスの基本構造

合わせガラスの構造

合わせガラスは、図のような「ガラス・中間膜・ガラス」の3層構造が基本です。

通常は3mmのフロートガラスを使用し、全体の厚さはガラス2枚と中間膜の厚さの合計となります。

合わせガラスの中間膜とは?

合わせガラスの中間膜には、一般的にPVB(ポリビニルブチラール)と呼ばれる樹脂膜が使用されています。

PVBは柔軟な性質を持っており、ガラスや金属に対する接着性が高いです。

そのため、ガラスが割れた際に破片の飛散や脱落を防止する効果があります。

また、透明度が高いため採光性は1枚ガラスと変わらず視界もクリアでありながら、ほぼすべての紫外線をブロックする効果もあります。

中間膜の厚さを示すときは「mil(ミル)」という単位で表されることが多く、1milは0.0254mmとなります。

中間膜の厚さと性能の比較
中間膜の厚さ 性能、効果の詳細
15mil(0.38mm) 15milの合わせガラスは、間仕切りや空間の装飾など屋内用としての使用が一般的です。
中間膜が30mil以下は分類が「合わせガラス」で、破片の飛散や脱落を防止する機能はありますが、破壊を目的とした攻撃への耐性はほとんどありません。
穴を開けるのはそれほど困難ではないため、防犯効果はないと考えてよいでしょう。
30mil(0.76mm) ガラスの飛散防止、脱落防止に効果はもちろん、UVカットなど基本的な性能を持ち、屋外に面した窓に設置します。
1枚ガラスに比べると防犯性能はあり、ドライバー等を使ったこじ破りには有効ですが、中間層が薄いため強い衝撃を複数回受けると短時間で穴が開いてしまうため、耐貫通効果はそこまで高くありません。
中間膜が30mil以上の合わせガラスは「防犯合わせガラス」に分類されるため、商品にはCPマークのシールが貼られています。
そのため、ハイグレードな防犯ガラスよりも費用を安くおさえつつ、犯罪者に対して視覚的な防犯アピールができるというメリットがあります。
60mil(1.52mm) 鋭利な道具を使ったこじ破り、バールなどの殴打による打ち破りに対して、強く抵抗します。
中間膜が60mil以上の合わせガラスは、「防災安全合わせガラス」と呼ばれており、犯罪者の侵入防止、地震や台風対策などに効果的です。
中程度の効果があることから、一般住宅用の窓において、防犯防災を目的とした合わせガラスの設置では主流となっています。
(※「防災安全合わせガラス」は、AGC(旧旭硝子)・セントラル硝子・日本板硝子の3社が製造販売を行う合わせガラスの共通呼称)
90mil(2.28mm) 打ち破りなど強い衝撃にも効果的で、貫通させるのは困難です。
ハンマーやバールなどの道具を使った打ち破りと呼ばれる粗暴な手口にも強く抵抗します。
通常のガラスよりも厚みがあるため、一般住宅用のサッシには基本的には設置ができず、店舗などで使用されることが多いです。
ポリカーボネート板 バットなどを使った打撃だけでなく、電動工具による攻撃に対しても強い抵抗を示し、抜群の耐貫通性があります。
ガラスに厚みがあるため一般住宅用のサッシでは取り付けはできません。
事務所や店舗などへ設置されるハイグレードな防犯ガラスです。

合わせガラスと複層ガラス(ペアガラス)の違いって?

合わせガラスと複層ガラス

合わせガラスと複層ガラスは2枚のガラスを使っていることから混同されやすいですが、構造や性質、用途の目的が全く異なります。

合わせガラスは中間膜を挟んでガラスがピッタリと圧着されており、防犯や紫外線カットなどの効果があります。

複層ガラス(ペアガラス)は2枚のガラスの間に中間層と呼ばれる空間がある構造で、断熱性や遮熱性が高く、冷暖房費の節約やCO2排出量の低減効果があります。

また、複層ガラスは部材に合わせガラスを用いることが可能です。

合わせガラスの効果、メリットについて

合わせガラスのメリット

合わせガラスは特殊な中間膜を挟むことで、通常の1枚ガラスには無い様々な嬉しい効果を持っています。

ここでは、合わせガラスが持つ基本的な効果について解説いたします。

ガラスが割れた時に飛散を防止する

フロートガラスと合わせガラス

合わせガラスに挟まれている樹脂製の中間膜は、ガラスに対して強い粘着性を示します。

通常のフロートガラスは割れると刃物のように鋭利な破片が周辺に散らばってしまうため、人体を傷つける可能性が高く危険です。

合わせガラスの場合は、破片が中間膜にくっつくため飛び散りません。

穴が開きにくい(耐貫通性を持つ)

1枚フロートガラスは強い衝撃を受けると、破片が脱落し簡単に穴が開いてしまいます。

合わせガラスは中間膜があるため、ガラスが割れても穴が開きにくくなっています。

防犯性に優れている

合わせガラスはバールやハンマー等の攻撃に対して強く抵抗し、耐貫通性能もあることから突破が困難です。

犯罪者の多くは家屋への侵入の際に5分以上かかると犯行を諦めるため、破壊に時間がかかる合わせガラスは防犯に最適なのです。

また、中間膜の厚さが30mil以上の合わせガラスには、防犯効果がある建築部材ということを示すCPマークのシールが付きます。

セキュリティレベルや防犯意識が高いということを見た目だけでアピールできるため、犯罪者除けの効果が期待できます。

防災性に優れている

合わせガラスが持つ飛散防止機能、耐貫通性は防災にも適しています。

災害時には、割れたガラスの破片による二次被害のリスクに注意しなければなりません。

窓に合わせガラスが使用されていた場合、暴風の風圧、台風で飛ばされた物がガラスにぶつかって割れても中間膜に破片が強く付着するため、ガラスが人体を傷つけ怪我を負うリスクが低減されます。

また、破片が窓枠から脱落するのを防止する効果もありますので、地震などで窓枠が変形しガラスが圧力に耐えきれず破損した場合も、周囲にガラス破片が割れ広がらないため安全性が高いのです。

紫外線をカットできる

合わせガラスのUVカット率

合わせガラスの中間膜には、紫外線吸収剤が含まれています。

窓ガラスに当たる日射の紫外線を100%としたとき、通常のフロートガラスは紫外線のカット率が約39%のため、約61%もの紫外線が屋内に入ります。

一方、合わせガラスは約99.9%とほぼすべての紫外線をブロックすることができるのです。

UV-Aは曇っていても地上に届き、ガラスを通り抜ける性質で、コラーゲンを破壊しシミ・シワ・たるみといった老化の原因となります。

合わせガラスの紫外線カット率はLow-E複層ガラスよりも高く、UVカットフィルムと違って劣化の心配もないため、窓から入る紫外線対策にはピッタリなのです。

合わせガラスの注意点、デメリットについて

合わせガラスのデメリット

ここからは合わせガラスのデメリットについての解説です。

窓ガラスは破損するまで半永久的に使うことができるため、長い付き合いとなります。

設置後に後悔しないように、メリットだけでなくデメリットを知ることも重要となります。

厚みがあり、重たい

フロートガラスと合わせガラス

合わせガラスは2枚のガラスと中間膜を使用しているため厚みがあり、サッシにも幅があります。

通常のフロートガラスの厚さは3mmですが、合わせガラスだと3mmガラスと60mil中間膜を使った一般的なもので約7.5mmの厚さとなります。

そのため単層ガラスに比べると、かなり重量があります。

納期がかかる

フロートガラスや型板ガラスなど特殊構造でないガラスは、一般のガラス屋なら在庫があることとカットができることから、割れ替えや設置は最短で当日の工事が可能です。

合わせガラスは中間樹脂膜が圧着されていることから現場ではカットができず、受注生産となります。

そのため通常よりも納期がかかってしまうのです。

合わせガラスの種類について

合わせガラスの種類

合わせガラスは中間膜の種類やガラスの種類によって、得られる効果が変わります。

ここでは、合わせガラスの種類と効果について、詳しくご説明します。

防犯効果・防災効果の高い合わせガラス

中間膜の厚さ別分類

合わせガラスの中間膜は耐貫通性や破片の飛散を防ぐ効果を持っており、中間膜に厚みがあるほどその効果が高くなります。

防犯と防災の両方に対して特に効果的とされる合わせガラスは「防災安全合わせガラス」と呼ばれており、中間膜の厚さは60mil(約1.52mm)以上。

中間膜60milは板硝子協会の仕様基準P4A/P3Kに該当し、小型のバールやドライバーなどの器具を使ったこじ破り、打ち破りに一定時間耐えることで犯罪者の侵入を困難にするため、高い防犯性が期待できるとされています。

防犯ガラスとは?

CPマークについて

防犯ガラスは、各ガラスメーカーの仕様基準から、試験結果をもとに防犯性能が認められた合わせガラスのことです。

防犯性能は中間膜の厚さが基準となっており、30mil(0.76mm)以上の合わせガラスは「防犯合わせガラス」に分類されます。

また、防犯ガラスに分類される合わせガラスは、CPマークが付きます。

CPマークのCPは「Crime Prevention」の省略で、意味は「防犯、犯罪予防」です。

警察庁と国土交通省と経済産業省といった行政と、板硝子協会や日本サッシ協会など複数の民間団体によって構成されている「官民合同会議」で実施される試験をクリアし、防犯性能が高いと認定された建築部材は「防犯建物部品」として「防犯性の高い建物部品目録」に掲載・公表され、CPマークの対象品となります。

防犯ガラスの場合は、ガラスを割るために行われる様々な攻撃に対し、5分以上防御することができた製品が対象です。

空き巣や強盗などの犯罪者は屋内への侵入経路に窓を選ぶことが多く、工具を使って窓ガラスを割った後に鍵の解錠を行い、窓を開けて屋内へ侵入する手口がよく使われます。

そのため窓の防犯には、ガラスを割ろうとする攻撃に対して強く抵抗し、防御機能の高さが実証されているCPマーク付きの防犯ガラスの設置が効果的なのです。

また、犯罪者の多くは犯行時に目立つことを嫌うため、突破に時間がかかるガラスは避ける傾向にあります。

防犯ガラスにはCPマークのシールが貼られているため、視覚的なアピールとしても犯罪者よけに効果的が期待できるのです。

地震対策には合わせガラスがおすすめ

内部被害による怪我の原因

近年では地震が起きる割合が増えているため、対策として窓ガラスの見直しが重要視されています。

日本建築学会の「阪神淡路大震災 住宅内部被害調査報告書」によると、1995年に起きた阪神淡路大震災の際に、家屋内部で負った怪我の原因は、負傷者全体のうち29%がガラスによるものという調査結果が出ています。

また、2005年の福岡県西方沖地震では十階建てビルに設置されていた930枚の窓ガラスのうち、約360枚が破損・落下し、破片が歩道に散乱し危険な状態となっていました。

地震の対策方法の1つとして、飛散防止効果を持った安全性の高い合わせガラスの導入はおすすめです。

防音効果のある合わせガラス

窓は住宅の中で音が最も出入りする部分であり、通常の1枚ガラスの窓は音の振動を吸収する効果がほとんどありません。

そのため、家の防音性能を上げるには、窓に防音機能を持たせることが重要となるのです。

防音交換のある合わせガラスは、中間膜に特殊な防音フィルムが使用されています。

音の振動を熱に置き換えることで音を透過させにくくする性質を持っており、低音域から高音域まで幅広い音域に対して遮音性を発揮します。

防音ガラスとは?

防音ガラスは、屋外の騒音をブロックしたり生活音の音漏れを防止したりすることができる遮音性に優れたガラスです。

合わせガラスタイプと複層ガラス(ペアガラス)タイプの2種類があり、防音合わせガラスは防音性のある中間膜が挟み込まれています。

複層ガラス(ペアガラス)タイプの防音ガラスは、2枚のガラスのうち1枚に防音合わせガラスを用いられた製品や、異なる厚さのガラスを使用した製品のほか、ハイレベルな防音複層ガラスでは中空層に音を吸収するレゾネーターが搭載された製品もございます。

防音ガラス導入の注意点として、音はガラスよりもサッシの隙間から伝わるため、防音ガラスは防音サッシとの組み合わせが推奨されています。

通常の複層ガラス(ペアガラス)は、防音効果がない

厚さが同じフロートガラス2枚によって作られているスタンダードタイプの複層ガラス(ペアガラス)は、低音域共鳴透過現象を起こすため、特定の音域での防音効果はありません。

高音域や中音域での防音効果はありますが、低音域ではガラス同士が共鳴してしまい、音の振動が通過してしまうのです。

そのため、複層ガラス(ペアガラス)に防音性を持たせるのであれば、2枚のガラスの厚さを変えることで低音域共鳴透過現象を起こさせないように設計された製品や、防音合わせガラスが部材に使われている複層ガラスの使用がおすすめとなります。

目隠し効果のある合わせガラス

窓に防犯性や防災性を持たせつつ、気になる外からの目線もブロックするのであれば、フロートガラスとデザインガラスの間に中間膜を挟んだデザイン合わせガラスがおすすめです。

一般的には型板ガラスとの組み合わせとなっており、採光性を損ねずにプライバシーを守りつつ、防犯や防災の対策もできる人気製品です。

AGC(旧旭硝子)から販売されている「スクールバリア」などが該当商品となります。

型板ガラスとは?

型板ガラスは、「かたいたガラス」と読みます。

ガラスの片面にでこぼこ模様がつけられたデザインガラスで、住宅の窓への使用率が高いことから目にすることが多いガラスです。

ロールアウト製法によって型模様が押されているため、ガラスそのものに凹凸の型模様がついています。

凹凸の模様はガラスに当たった光を乱反射させ、ガラスを通して見た物の形がゆがんではっきりと見えなくなります。

そのため、外からの視線をさえぎることを目的として設置されることが多く、玄関扉や1階の部屋の窓、浴室のドアなどプライバシーを守りたい場所での使用率が高いです。

光の透過率は表面加工なしのガラスと変わらないため、明るさはフロートガラスと同程度となりますが、凹凸の模様が光を拡散させることから、光の届き方が柔らかになります。

デザイン性・意匠性が高い合わせガラス

空間の演出にあわせて安全性や防犯性を取り入れるのであれば、デザインが入った合わせガラスがおすすめです。

模様によって目隠し効果も得られるため、プライバシーの保護効果もあります。

代表的なデザイン合わせガラスとしては、AGC(旧旭硝子)が製造販売を行う「ラミトーン」で、主にパーテーションに使用される商品です。

中間膜に和紙柄などのパターンを施すことで装飾効果を持つ「ラミトーン グラフィカルパターンシリーズ」と、中間膜に特殊なカラーフィルムを使用することで様々な色味が加えられた「ラミトーン クリスタルカラーシリーズ」がございます。

なお、ガラス自体に模様がついたデザインガラスを使った合わせガラスは、一般販売がほとんどありません。

基本的に受注生産となりますので、導入する際は打ち合わせや納期に日数がかかる点に注意が必要です。

デザインガラスとは?

デザインガラスはその名の通り、模様・色などデザインが施されたガラスのことを指します。

ガラスそのものにデザインが入ったものと、合わせガラスの中間膜にデザインが入ったものの2パターンが主流です。

透明なフロートガラスを加工して凹凸をつけることで模様が付けられたガラスは、エッチングと呼ばれるガラスの表面にサンドブラストと薬品処理を加える方法や、まだ熱く柔らかいガラスをバターンが彫刻されたロールを通すことで模様を転写するロールアウトといった方法で製造されています。

現在の住宅でもよく見られるすりガラスやフロスとガラスのほか、国内製造が終了したもののSNSなどから再注目され最近人気となっているレトロな昭和型板ガラスもデザインガラスです。

中間膜にデザインが入った合わせガラスは、ドットやストライプなどのパターンが印刷されたもののほかに、和紙や布が挟まれた特殊合わせガラスなどもございます。

また、印刷技術の向上により、ガラス自体にインクを吹き付けるダイレクト印刷のデザインガラスも登場しています。

カラーガラスとは?

カラーガラスは色が加えられたガラスで、空間の演出やゾーニング、目隠しなどに向いたガラスです。

ガラスに色を持たせる方法は、ガラスに鉱物を加えて製造することでガラスそのものに色を付ける、ガラスに塗料をコーティングする、合わせガラスに色が付いた中間膜を挟み込んで圧着するなどの技術が用いられています。

高透過合わせガラス

透明度が高くガラス特有の青みが無い高透過ガラスに、中間膜が挟まれた合わせガラスです。

ガラスを通して見る商品や景色の色をそのまま楽しむことができ、なおかつ防災や防犯の効果も持ち合わせています。

高透過ガラスとは?

一般的なフロートガラスはよく見ると薄い青色や緑色をしているのですが、これはガラスに微量の酸化鉄が含まれていることが原因です。

高透過ガラスは製造過程で酸化鉄を取り除くことで透明度を上げ、限りなく無色透明に近い状態となっています。

ガラス越しに見たものの色味が損なわれないため、店舗のショーウインドウやショーケース、美術品など展示物用のケースなどに使用されることが多いです。

合わせガラスの交換はガラス屋ミーア

合わせガラスの効果や性能、メリット・デメリットなど、合わせガラスについてご紹介しました。

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